魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2026年3月20日
Column #111

白銀の立山連峰の懐に抱かれし富山の「シロエビ」駿河のサクラエビと二大至宝が競演の春

富山湾に棲むシロエビ

シロエビは壺(つぼ)のような深海をもつ日本海富山湾に棲む小さなエビで、本名をシラエビという。以前、サクラエビについて書いたことがあるが、こちらがうららかに桜咲く太平洋側の駿河湾で漁が始まる風物であるのに対し、シロエビは同時期とはいえ白銀の立山連峰からの吹き下ろしが冴える日本海で解禁を迎え、芽吹きの季節をほのめかす早春の使者である。いずれも〝宝石〟と謳(うた)われる春のエビなれど、地域が変われば趣が違う。

両者とも普段は300メートルもの深海に浮遊して棲み、夜間に浮上してくるところを網を引き捕らえる漁の仕組みは変わらない。サクラエビは5センチに満たない桜色の小エビだが、シロエビは少し大きく10センチほどになる。獲れたては白というより透き通るようであって、死ぬと白くなる。

駿河のサクラエビ、富山のシロエビ。この二大至宝を並べて紅白競演と売り出したのは、冷凍や流通が発達した昨今の発想ではあるが、これはなかなかに言い得て妙。本来ならば相席することのない2つのエビが、文明の進化によって奏でる春の風情も悪くない。シロエビの漁期は4~5月と8~9月。サクラエビは4~5月と11~12月だから、本州島を南北にまたいだ春限定の出合い物ともいえよう。

かように酷似する2種であるが、相違点がある。シロエビは胴の部分が長く、体を覆う殻の質がサクラエビとは違い、素揚げにしても丸ごと食べるにはいささか口に残る。そこで、ぬらしたエビに片栗粉を振って軽く揚げ、これをいったん冷凍しておくのだ。そうして食べる前にもう一度揚げると、あら不思議。堅かった殻がサクサク香ばしく変身するという事実を皆さん、ご存じであろうか。

サクラエビのように殻ごと生では食えないので、浜のかーちゃんたちが竹串でせっせと殻をむく。延々とむき続け、白いむき身の山を築く。これを海苔(のり)で巻いた軍艦にてんこ盛りしてほおばる幸せは言うまでもないが、その手仕事を思うとき、シロエビの味わいは富山の愛の結晶でもあるのだなあと感じ入りしばし瞑目(めいもく)だ。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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