魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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食育専門家・浜田峰子の魚で元気な未来!

2019年3月15日
Column #025

世界が感嘆、
ふぐ料理は日本の誇り

ふぐの旬は「秋の彼岸から春の彼岸まで」です。皆さんはもう旬のふぐを食べましたか?この時期に成長したふぐが産卵のため日本沿岸に近づくので、ふぐ漁は最盛期を迎えます。ふぐ料理によく合う柑橘(かんきつ)類も旬を迎えます。

ふぐ鍋は「てっちり」、ふぐ刺しは「てっさ」と呼ばれていますが、その語源は何だと思いますか?日本では昔、ふぐを食べることが禁じられていた時期がありました。きっかけは安土桃山時代、豊臣秀吉が兵を率いて下関に立ち寄った際に、兵たちが地元で獲(と)れたふぐを食べ、毒にあたって多くの死者を出してしまったことです。秀吉は主君のために戦う前にふぐにあたって命を失うとは何事だと、「ふぐ食禁止令」を出し、それが江戸時代も続きました。明治になって下関のある山口県で解禁され、昭和になってようやく全国的に解禁されました。

ただ、食べるなと言われると余計に食べたくなるものです。「たま(弾)に当たると死ぬ」ことから、ふぐを隠語で「鉄砲」と呼び、ひそかに食べられていたのです。そして、「鉄砲のちり鍋」が転じて「てっちり」に、「鉄砲の刺し身」から「てっさ」と呼ばれるようになったのです。

ふぐは現在、都道府県が定める条例に基づいた試験を受け、免許を取得した有資格者しか取り扱いできません。毒のある部位の除去と、有毒部分の適切な処理が義務づけられ、消費者が安心してふぐを食べられるようになりました。

世界的に、毒を持つふぐを食べる文化のある国は少なく、最近では海外からの観光客にふぐ料理が人気です。特に「てっさ」は、専用のふぐ引き包丁で、皿の絵柄が透けて見えるほど薄く切る料理人の技術力の高さと、菊の花のように美しい盛り付けに世界の人々は感嘆の声をあげ、インスタグラムにもその写真が数多くアップされています。世界が注目する日本ならではのふぐ料理を誇らしく美味(おい)しく食べましょう。

「てっさ」と呼ばれるふぐの薄造り

浜田 峰子
はまだ・みねこ

食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。

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