東京湾には実にたくさんの魚介類が生息しています。江戸前の魚の中でも食用として市場に並ぶものはほんのひと握りです。といっても、埋立地が多い東京ではその生態を実際に見られる場所は限られています。そこで、皆さんにお薦めなのが、水族館です。関東各地の水族館では地元の川や海に生息する魚介類を生態系ごと水槽の中で再現して展示しています。
例えば、しながわ水族館(東京都品川区)には「東京湾に注ぐ川~品川と海」という展示コーナーがあります。海へと注ぎ込む河川がつくりだす砂地や干潟、波が荒々しく打ち寄せる磯、魚介類の産卵場となるアマモ場など東京湾周辺にある浅瀬の環境と生物がたくさん見られます。アマモは海草の一種です。5月の大潮のころに開花し、花から放出された花粉で水面が金粉をまいたようにきらめきます。産卵場所で稚魚が育つことから「海のゆりかご」とも呼ばれます。
展示ではギンユゴイ、キュウセン、アナハゼ、ハオコゼなど、市場に並ばないけれど東京湾に多く生息する貴重な魚が見られます。
また川の源流から上流、中流、下流までを再現した水槽が並び、ニッコウイワナ、ヤマメ、サクラマス、ウグイなどが泳いでいます。沿岸地域に立ち並ぶオフィスビルやホテル、貨物船などが停泊する埠頭(ふとう)など、現在の品川の様子も、ジオラマでリアルに再現されています。
都会と目と鼻の先にある海にもクロダイやスズキなど沢山の魚が生息していて、東京湾が育む生命の力強さを感じることができます。華やかなショーも楽しいですが、環境や資源、食育といった問題意識を持って水族館を訪れてみると、森がきれいな川をつくり、川が豊かな海をつくり、そこで魚介類が育つ、という本来の海のあり方を実感することができます。ぜひ皆さんも、水族館で豊かな海の大切さを感じてください。
水族館では魚介類の生態系や生息環境を学ぶことができる
食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。