落研部・丸めがねが始めた「落語×魚」の新連載『オトナの落研』第2弾。前回は、しっぽりムードで落語を楽しませてくださった古今亭文菊さんと、日本の美を感じる『鯛出汁のお粥御膳』をご紹介しましたが、今回は真逆!暴走族の総長から噺家に転身し、かつファッションモデルさながらのイケメンぶりでティファニーのWEB版CMにも出演と、飛ぶ鳥を落とす勢いの若手・瀧川鯉斗師匠をゲストに迎え、三陸から届いた旬の岩ガキをいただきながら居酒屋トークしてきました。
7月某日。東京・自由が丘のイタリアンバル『TRATTORIA Cathy's(トラットリア キャシーズ)』の店先にスッと現れた瀧川鯉斗さん(35歳)。普段の着物姿から一転し、身長182cmのモデル然としたスタイルは、カジュアルな私服も絵になります。
冷えた白ワインで一息つくと、本日の魚料理1品目となる岩手県産の岩ガキが登場。同店は、希少種のカキを全国から毎日取り寄せ“本日の生ガキ”専用メニューボードを通年準備するという、カキ好きにはたまらないお店です。今回は『広田湾気仙産の殻付き生ガキ』をオーダーしました。
岩手県の最南に位置する広田湾から届いたカキは、大ぶりでクリーミーな味わい。湾のすぐそばに茂る森と、気仙川から流れ込むミネラル豊富な水で育ったカキは、噛むほどに口の中に甘さが広がる“これぞ三陸”を感じさせる夏の一品です。
「僕、生ガキめちゃめちゃ好きなんですよ。テレビの情報番組やグルメ特番とかで“カキ食べ放題ツアー”とか見つけると、そのまま見入っちゃって」と、よく肥えた大ぶりの岩ガキにパッと目を輝かせる鯉斗さん。ツルンとひと口で頬張ると、「美味しい・・・いやぁ・・・このカキはめちゃくちゃウマいですね」と呟き、2口目のワインを飲む前には3粒を完食されていました。
令和初の真打として5月から真打昇進披露興行がスタートした鯉斗さん。どの寄席でも若い女性が詰めかけ、特に大初日を迎えた新宿末廣亭では、普段使わない2階席を開放するも全席完売の“札止め”という盛況ぶりでした。「僕自身、本当に驚きました。もう興奮しましたね!ほかの寄席でも立ち見状態だったので、楽屋で師匠達から『割りがいいなぁ〜』と褒められました(笑)」。
これほど注目を集めたきっかけは、ルックスだけにとどまりません。すでにバラエティ番組でも取り上げられ話題となった、10代から暴走族に入り総長まで登り詰めた“バリバリのヤンキー”からの転身。「中学の頃からとにかくやんちゃでした。当時は『ろくでなしBLUES』(集英社)や『クローズ』(秋田書店)など、いわゆる“不良漫画”が人気だったこともあり、中学生の僕は、その世界にこそ男気あふれる格好いい生き方があると思っていました」。
高校時代の話に水を向けると「実は・・・当時サッカーのスポーツ推薦で進学を希望していたんですけど、素行が問題視されてダメになってしまって。自業自得ですね(笑)だから働こうと思ったんです。でも、母に反対され、どうにか高校に入りました。ただ、1日しか行ってません」と、驚きの事実をあっさり告白。「入学式の朝。僕が学校に着くと、そこには先輩たちが待ち構えていて、そのまま大ゲンカ。翌日、自主退学を勧告されて・・・僕の高校生活は1日で終わりを迎えました」と、ノンフィクションとは思えない武勇伝が飛び出しました。
短すぎる高校生活については「母親から『せっかく制服も教科書も買ったのに!』と叱られましたねぇ。僕も『そこは、ごめん』としか言えなくて(笑)」と、あっけらかん。すぐにアハハッと笑い飛ばしてしまう明るさと潔さが、人を束ねられる魅力の1つに感じました。
その後、昼はガテン系の仕事で生計を立て、夜は暴走行為に邁進。転機は、俳優を目指して18歳で上京したことだったそう。バイト先の飲食店で独演会をしたのが、現在の師である瀧川鯉昇(りしょう)さん。人生初の落語、そして噺家という職業を目の当たりにして、鯉斗さんは雷に打たれたように“噺家”に惚れ込んだそうです。
「たった1人で高座に上がって、1本のマイクを前に、いろんな人物を表現して、客席をわかせていた。芝居のように共演者もいなくて、最初から最後まで頼れるのは己の話芸のみ。めちゃくちゃ格好よかったんです」
人生で初めて落語と出合った夜。そのまま弟子入りを志願したというから、それこそが“瀧川鯉斗”なんだと思いました。趣味も仕事も、好きも嫌いも、言い訳なし。「こう!」と決めたら後には引かない一本槍の気性こそ、魅力そのものであり最大の武器。どんな質問に対しても包み隠さず、歯切れよく、そしてにこやかに答えてくれる鯉斗さんは、ルックス以上に中身がイケメンでした。
次回は、一度決めたら脇目も振らずに突っ走っていく鯉斗師匠の、恋愛観をご紹介。女性に人気の一風変わった魚介のパスタと併せて、鯉斗さんの異性のタイプに迫ります。
【きょうの逸品】
岩手県広田湾気仙産の岩ガキ(夏ガキ)
【きょうの噺家さん】
ルックスに加えて中身が真の男前!瀧川鯉斗師匠
大きめ丸眼鏡と切りすぎてる前髪が目印の、愛称・丸めがね部長。TBSドラマ「タイガー&ドラゴン」で落語にハマるも、好きな噺家は古今亭志ん朝(3代目)に桂枝雀と、マニア度浅め。朝の通勤ラッシュは落語を聞いてニヤつきつつ、夜になれば足が向くまま赤提灯へ。好きな魚料理とお酒でいい心持ちになり、家に帰って寝て起きて。電車に乗れば、またイヤフォンつけて・・・。こんな丸めがねが、食べて飲んで笑ってるだけの「落研日記」はじめました。