魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2026年6月12日
Column #114

夏の盛りを突っ走る孤高の青物「ヒラマサ」はブリ界のアスリート

筋肉が強く、寝かせるほどに味が良いヒラマサ

世に「ブリ御三家」と呼ばれる仲間がいる。青物と呼ばれるブリ、カンパチ、そしてヒラマサだ。いずれもすし屋でおなじみの大型の魚であるが、系統的に言うと実はアジの親戚。体の構造やヒレの位置など、眺めてみればそっくりなのだ。進化の果てに肉食化が進み、おまけに小アジが好物ときている。「アジがアジ食って味良し」というわけなのだ。

当然、味の傾向もアジに似るわけだが、とはいえ種が違えば個性を帯びる。肉質でいうと、同じ鮮度であれば、ブリが一番やわらかく、次いでカンパチ、張り良くかたいのがヒラマサだ。アジ系の範囲内ではあるけれど、ブリは血の気が多く赤身寄り、ヒラマサになると白身に近づく。寒ブリの季節が過ぎて、春ブリも痩(や)せて、カンパチの若魚もまだ小さい、というあたりで顔を出し始める夏の魚がヒラマサだ。

青緑の背に銀白の腹、それを分かつ黄金色の帯が体の真ん中を勇ましく走り、顔つきが険しい。御三家の中で最も体が平たく強靱(きょうじん)な遊泳力をもち、餌をめがけて突進する。漢字で書くと「平政」。マサはまっすぐな縞(しま)が通る優良な板木になぞらえ、〝柾目(まさめ)〟から来ているというが、その勇ましい風貌と膂力(りょりょく)を思うに、弱きを助け強きを挫(くじ)く、かの任俠(にんきょう)伝説の大政小政を思い出してしまうのは妄想か。

ヒラマサはブリ界のアスリートであるからして筋肉が強い。なので獲(と)ってすぐより寝かせるほどに味が良いとされるが、熟成可能な期間が長く、2週間など全く平気。獲れたてを薄く削(そ)ぎ切りにし柚子胡椒(ゆずこしょう)で嚙(か)むのもいいが、十分寝かせてねっとり刺し身や握りで味わうのもいい。味の変化を存分に楽しめる魚でもある。サイズは2~3キロが味が良いとされるが、かつて27キロの巨体を切ってみたが、伝聞に反し、これもまた良い個性があった。初夏から始まる旬は秋まで続き、ヒラマサは夏の盛りを突っ走る。高水温で海の夏枯れが長引く昨今、当分おつきあい願いたい。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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