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ウエカツ流サカナ道一直線

2026年10月9日
Column #118

毒と醜き姿の先に至高の味あり 高級魚「オコゼ」を丸ごと味わい尽くす

異容の高級魚、オコゼ

異容の高級魚、オコゼ

オコゼという魚がフグやクエと並んで実は高級な味と値段であることは、知る人ぞ知るところではあるが、実際に生きている本物をまじまじと見た人は案外、少ない。初めて見た人は「はたしてこれは魚か?」と思ってもおかしくない。岩塊のような風貌で動かず海底でじっとしていて誰も魚とは気づかない。あまりにも醜いので、山の猟師が醜い山の神の機嫌をとるために、もっと醜いこの魚を干してお守りにするという。

背には鶏のトサカのように毒のある背びれが大きくそそり立つ。人間につつかれて怒りヒレを広げるこの様はどこかで見たことがある。そう。天守閣の甍(いらか)の両端に威張っている「シャチホコ」だ。漢字でオコゼは「虎魚」、シャチホコは「鯱」。まさに毒と異容をもって外敵を制すのだ。

背、腹、尻の3つのヒレの棘(とげ)に強烈な毒があり、指先に刺さると肘まで腫れる。まずはこれらをチョキチョキ切り取るところから調理は始まる。

これで安心と思いきや、おっといけない、ヒレは新聞紙に包んで捨てる。頭を落とし、皮をむくと、透明感のある浅いクリーム色の身があらわとなり、ほれぼれする。

半身は薄造りにするとガラス細工のように皿の上で輝く。骨付き半身はぶつ切りにして片栗粉で揚げ、別皿に。半割りにした頭とアラはすましでもよし、八丁味噌(みそ)の椀(わん)もいい。内臓だって捨てない。胃袋と皮は茹(ゆ)でて刻んで刺し身に添える。貴重な肝はうやうやしく刺し身の中央に置くか。これが「オコゼの一式」。全てを味わい終えたとき、30センチに満たないこの魚の底力に感服することだろう。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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