「おいしい!」「おかわり!」「あった!」
愛知県常滑市の青海公民館に元気な子供たちの声が響き渡った。同市教育委員会は昨年12月、「わくわく体験教室『さかなの耳石(じせき)ゲットだぜ!』」を開催。小学生と保護者の13組29人が参加した。
平衡感覚に関与する組織で、小さくて白い宝石のような魚の「耳石」を通じて魚に興味をもってもらうのが狙い。水産卸会社、中部水産(名古屋市熱田区)の神谷友成取締役(60)が講師を務め、地元で取れるオオメハタや大きな耳石を持つイシモチなどをさばいて調理し、きれいに食べて耳石を探し出す。
参加した小学5年生の石原琢巳くん(11)は「初めて魚をさばいた。耳石はすごくきれいで他の種類も集めたい」と、目を輝かせる。母親の美紀さん(42)も「普段は骨がある魚を嫌がるのに、たくさん食べてくれた。家でも尾頭付きで出したい」と話した。
神谷さんは「調理が簡単な切り身ではなく、尾頭付きの魚をさばいて食べてみようというきっかけになればうれしい」と、手応えを感じていた。
「わくわく体験教室『さかなの耳石ゲットだぜ!』」で魚をさばく子供たち=愛知県常滑市(福原珠理撮影)
東京都墨田区の東京海洋大学・東向島オフィスでは昨年11月、「地産都消プロジェクト『さかな大好き!』気仙沼メカコロを食べよう~」が開かれた。宮城県気仙沼市で水揚げされたメカジキを保育園児たちに食べてもらおうというイベントだ。
園児たちは鋭く長い「吻(ふん)」を持つメカジキに触るなど興味津々。その後、メカジキを使ったコロッケ「メカコロ」を食べると「おいしい!」との声が一斉に上がった。
同大産学・地域連携推進機構の勝川俊雄准教授は「産地のことを知れば知るほど、食べるのも楽しくなる。それが本当の意味での食育になる。子供の頃から本物のおいしい魚を食べることが大切だ」と語る。
メカジキを使ったコロッケ「メカコロ」をおいしそうに食べる園児たち=東京都墨田区(宮川浩和撮影)
「包丁は前に押すように」「魚は塩を振って水気を拭き取ると臭みが抜け、ふっくら仕上がる」
都内のマンションの一室で、会社帰りの30~40代の男性8人が熱心にメモを取りながら料理の手ほどきを受けている。教えているのは、パパ料理研究家でビストロパパ(東京都港区)代表の滝村雅晴さん(47)。昨年11月に父親を対象とした「パパの料理塾」を開講した。
「おなかが減ったときに自分のために作るのが“男の料理”。“パパ料理”は妻や子供に食べてもらうために作る家庭料理」と、滝村さんは定義する。
料理塾は、お酒を飲みながら打ち解けたムードで参加者が協力して料理を作り、食事を楽しんだ後、分担して後片付けまでしっかりやるのがルール。習った料理を再現して家族に食べてもらい、SNSで報告することも「約束事」にしている。参加した都内在住の会社員(35)は「家族に喜んでもらいたくて参加した。基本を教えてもらえるので料理の幅を広げられそう」と感想を語った。滝村さんは外食などで魚のおいしさを知っている父親にこそ魚介料理で腕を振るってほしいと考えている。「海に囲まれた自然の恵みである魚のおいしさと、大切な日本の魚食文化を子供にきちんと教えてほしい」と話す。
「SAKANA & JAPAN PROJECT」では滝村さんと協力して“パパ”を魚食推進の担い手とする取り組みをスタートさせる予定だ。
包丁の使い方を実演する滝村さん