夕方6時を過ぎると、スーパーの店頭には半額シールを貼られた魚介が目立つようになります。私は仕事が終わった後、パトロールと称してどんな魚介が売れ残っているか、あちこちの売り場をチェックしています。産地直送の魚、天然の貝や海藻も、もったいないことに売れ残っていることが多いのです。
そんな廃棄寸前の魚介を購入し、おもてなしにピッタリの一皿に調理したものをレスキューレシピと名付け、SNSにアップしています。それらを見た各地の漁業者の方々がコメントしてくださいます。「半額シールを貼られないことが私たち漁業者の願いです」「苦労して獲ってきた魚を廃棄なんて悲しい」「無駄なくおいしく調理してくれてありがとう!」
写真は、半額シールを貼られていた、夏からが旬の天然のツブ貝を使った一皿です。ゆでてスライスしてチーズとポン酢のジュレであえ、ハーブを添えました。調理師専門学校の生徒たちにも見せてみましたが、みんな「おいしそう!」と言い、誰も廃棄寸前だったとは気付きません。
貝類は、「何分ゆでるのか?」「相性の良い食材は?」など分からないことが多く、家庭で調理をするのは、実はとてもハードルが高い食材です。消費者に、簡単においしく調理できる方法や家庭の食卓の一皿になるようなイメージを提案することがいかに大切かということです。
売れ残る魚介には「情報不足」という共通点があります。魚の食べ方の提案が圧倒的に不足しているので、しょうゆをつけて食べるだけの刺し身に比べ、加熱など調理の必要がある魚介は売れ残ることが多いのです。例えば、魚でも「塩を振ってトースターで焼くだけ」「電子レンジで1分チンでOK」などと書いた紙さえ添えてあれば、包丁もまな板もフライパンもいらずに簡単に食べられると分かり、食卓のもう一品に加えたいと思う人がもっと増えるはずです。
スーパーなど小売業界には、ロスを減らすためにも、「情報提供」にもっと力を入れてほしいと、日々強く思いながらレスキューを続けています。
半額シールを貼られたツブ貝を使った一皿
食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。