もうすぐゴールデンウイークです。5月5日は端午の節句、ご家族でご馳走(ちそう)を囲む方も多いのではないでしょうか。男の子がたくましく成長することを願う行事として現在は定着しています。誕生後初めて行われる節句を初節句と言い、身内でお祝いを行います。地域によって鯉(こい)のぼりや鎧兜(よろいかぶと)、五月人形などを飾り、菖蒲(しょうぶ)の音が武を重んじる「尚武」と同じであることから、強くたくましく育つように菖蒲湯につかったりします。
鯉のぼりは、江戸時代に武家で始まった日本の風習で、男児の出世と健康を願って布などに鯉の絵柄を描き、風になびかせました。中国の後漢書にある故事で、黄河の急流にある竜門と呼ばれる滝を登り切ることができた鯉が竜になったことにちなみ、鯉の滝登りが立身出世の象徴とされていることから鯉が描かれるようになりました。立身出世の関門を意味する「登竜門」も、この故事に基づいたものです。
日本には、昔から鯉を食べる食文化があります。特に、海から離れた山間の地域では古くから祝い事の料理として、また貴重な動物性タンパク源としても日常的に食されてきました。
地域によってさまざまな料理があり、代表的なものには、薄くそぎ切りにした「洗い」、血抜きをせずにみそで煮込んだ「鯉こく」、切り身を砂糖醬油(じょうゆ)で甘辛く煮付けた「うま煮」や「甘露煮」など郷土色豊かなものです。
日本の漁業には、海で行う「海面漁業」と河川・池・沼・湖など淡水で行う「内水面漁業」があります。食用の鯉は、内水面漁業によって日本各地で天然のものを漁獲したり、養殖されたりしています。
漁獲量では1位が青森県、2位が新潟県、3位が茨城県。養殖量は1位が茨城県、2位が福島県、3位が宮崎県です。皆さんの身近なところにも鯉の食文化はあります。端午の節句には、子供の健やかな成長を願って立身出世の象徴である鯉料理を食べて、家族皆でお祝いしてください。
男児の立身出世を願い掲げられるようになった鯉のぼり
食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。