わが家の記念日に作る「アリガトウ」のオムライス
料理が楽しいと気付いたのは結婚して長女が生まれてから。1人暮らしをしているときに、適当に作ることはあったが、料理が好きだとは思っていなかった。作った料理を食べてくれる家族がいる。それが、料理を楽しく続けられる理由かもしれない。
料理研究家として、独立起業して今年で14年。父親が家族のために料理を作る世の中にしたくて活動を続けてきた。時がたち、二極化してきた感じはするが、父親が料理をすることは珍しいことではなくなった。家族で食卓を囲む回数は有限。だからこそ「共食」の時間を何よりも大切にしてきたが、ライフステージが変わることで、さらにそれを実感するようになった。
妻の終業時間が遅くなり、娘の塾通いが始まったことで夕食の時間が遅くなった。1人で先に食べることも増えた。明らかに、家族一緒に食事をする回数が減っている。作る料理も出来立てがおいしい料理から、冷めても温め直せばすぐ食べられるカレーやシチュー、豚汁などのメニューが増えた。疲れているときは、さすがに料理が面倒だと思うときもあるし、洗い物を放棄して、台所をそのままに寝てしまう日もある。けれど、料理が嫌いにはならないし、楽しいと感じている。自分のためだけに作っていないからだ。
人は、誰かの役に立つために生きている。誰かのために料理を作れることは生きている証しなのでは。それこそがウェルビーイング(心身の健康と幸福)だ。食べてくれる人がいること、そして連載開始からこのコラムを読んでいただいた方すべてに「ありがとう」を言いたい。
パパ料理研究家。昭和46年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。