魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2017年4月7日
Column #001

奇跡の国魚島ニッポン

魚食の復興に取り組む上田勝彦氏

日本はサカナ的に見れば奇跡の島国だ。東西南北に長く、世界三大漁場にも数えられる「金華山沖(三陸・常磐沖)」をはじめ、日本全国の漁場から季節ごとの魚がやって来る。メリハリの効いた四季によって、地域ごとに季節の味わいが楽しめる豊かな食材と料理の数々は、まさにこの日本の風土から生まれた感性の実証だ。

日本の海に棲(す)む魚は約4500種といわれているが、うち食用として流通している魚が約300種。これにエビやカニ、海藻、貝類なども含めて市場に流通する魚介類は500種ほどにのぼる。さらに同じ魚でも時期や場所によって質や味が変わるので、多くの地域でその魚をおいしく食べるための工夫がなされてきた。その組み合わせと味わいは星の数ほどもあろう。これほど豊かで季節を大切にした食卓を囲める国は、ほかにどこにもない。

一方、この境遇と矛盾するかのように、現代のわが国には「サカナ離れ」なる言葉が存在する。昭和の高度経済成長を経て、あこがれだった肉やパンも当たり前に手に入るようになった今日、鮮度が落ちやすく手間がかかるといわれる魚が食卓にのぼる頻度はここ30年間、低下の一途をたどる。島国の集合体である日本国の民が魚から離れてしまったとき、それは自分の力でメシを食えない国になることを意味しまいか。

「食は国なり」。国のチカラは、自力でメシを食うチカラ。それは、畑や海や山によって支えられていて、そこに働き、作り、獲り、育てる人々がいてくれることによって私たちは生きることができる。

そんな状況の中、全国の漁師たちを束ねる全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)が、魚食の復興に挑んでいる。「PRIDE FISH(プライド・フィッシュ)」プロジェクト。これは、食卓から忘れ去られゆく魚たちのこと、それを獲る人々のことを改めて伝えてゆこうとする日本の漁師の決意表明である。

このコラムは、日本の浜が誇る魚たちの来歴をたどり、その暮らしぶりの面白さ、旨(うま)さ、食べ方などを余すことなく活写し、頑張る浜へのエールとすべく始まろうとしている。魚は日本の宝。季節の香りとともに、存分に味わっていただきたい。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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