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和食伝導 金沢から世界へ 髙木慎一朗

2020年7月17日
Column #010

「旅農家」で農業に働き方改革

KNOWCHのブドウ園では柔軟な働き方を実践している=石川県かほく市(同法人提供)

新型コロナウイルスの影響で、テレワークが急速に普及しています。時間や場所に縛られない柔軟な働き方は感染予防のみならず、子育て世代や地方の人材の活躍を後押しするはずです。テレワークはオフィスにおける働き方改革ですが、料理人としていま期待しているのが農業の働き方改革です。新型コロナウイルスの影響で、テレワークが急速に普及しています。時間や場所に縛られない柔軟な働き方は感染予防のみならず、子育て世代や地方の人材の活躍を後押しするはずです。テレワークはオフィスにおける働き方改革ですが、料理人としていま期待しているのが農業の働き方改革です。

金沢発の農業ベンチャー「KNOWCH(ノウチ)」は、農地に縛られずに作物を育てる「旅農家」を掲げています。農業は働く人の7割を60歳以上が占め、担い手不足が深刻になるとともに耕作放棄地の増加が止まりません。一方で、農業を志す担い手予備軍には、農地探しが最初のハードルになります。

そこで全国に散らばる耕作放棄地を借りてネットワーク化し、作りたい作物や働きたい時期によって自由に場所を選べる仕組みを発案。季節や作物に応じて旅をしながら農業に取り組むイメージです。例えば、メンバーの一人は元プロスノーボーダー。冬季は大会や練習に費やし、夏季は作物を育てるという柔軟な働き方を実践していました。

ノウチでは平成30年5月に石川県内の農地計1.2ヘクタールを借りコマツナやジャガイモの栽培を始め、同年12月には農地所有適格法人の基準もクリアしました。全国の遊休農地の購入や貸借が可能になり、これまで石川、富山両県で計12ヘクタールまで農地を拡大し、ネギやブドウ、コメの栽培に7人が携わっています。

取締役を務める佐藤圭祐さんは「農地のネットワークを全国に広げ、季節要因や天災などのリスクを分散すれば経営も安定する」と先を見据えます。

日本の食料自給率は徐々に減少し、30年度は37%(カロリーベース)。食料の安定確保はもちろん、食文化を守るため身近な食材の供給元を絶やさないことが大切です。その担い手を育てるには固定観念にとらわれず、多様な働き方を認める柔軟な発想が必要になるのではないでしょうか。

髙木 慎一朗氏
たかぎ・しんいちろう

昭和45年開業の「日本料理 銭屋」の2代目主人。京都吉兆で修業の後、家業を継ぎ、平成28年に「ミシュランガイド富山・石川(金沢)2016特別版」で2つ星を獲得。29年に農林水産省の「日本食普及の親善大使」に任命された。

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