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和食伝導 金沢から世界へ 髙木慎一朗

2021年6月25日
Column #021

魚の生態系保護、日本こそ

競りにかけられるクロマグロ

私は16歳の頃、アメリカのニューヨーク州の高校に交換留学生として1年間通っていました。渡米してしばらくの間は、見るもの全てが珍しく、退屈はしませんでしたが、それもつかの間。1カ月もたつと、さすがに日本の食事が恋しくなりました。そんな話をクラスメートにすると、「日本人は刺し身(生魚)を食べるんだろ?シーライオン(アシカ)みたいだな」と冷やかされたりしたものです。ところが、今はすしやラーメンなど和食は世界中で大人気。まさに諸行無常の理を表していますね。

米国人のみならず、世界中の人々に最も人気のある魚はマグロではないでしょうか。もちろん、伝統的にマグロ漁を行っている地中海沿岸諸国をはじめ、多くの国で伝統的に食されているのですが、国別の消費量では、今でも日本が世界一です。生態数が激減しているといわれているクロマグロに至っては、世界全体の消費量の約7割が日本です。それほどまでに愛すべき食材であるクロマグロを最も乱獲していたのも日本なのです。ちょうど今ごろの6~8月がクロマグロの産卵期です。これまでは産卵期に「まき網漁」が行われていました。漁獲量制限はされていたとは思いますが、実は漁獲量には廃棄分は含まれないのです。まき網で大量に獲れたマグロが漁獲制限を超過した場合、そのまま海に廃棄しているケースもあるとか。欧米諸国のマグロ漁では、常に監督官庁の監視員が同船し、水揚げ状況を厳しく管理しているそうです。これは素人のマグロ釣りの場合も同様で、釣り上げてよい匹数から釣り具に至るまで、厳しい規制があります。残念ながら、日本はそこまで厳しくはありません。

伝統的に魚を食べる和食文化を受け継いできた日本は、どの国よりもその生態系を守る姿勢を見せる必要があります。和食伝導のためには、先祖伝来の自然の恵みを残していく努力を怠ってはいけません。

髙木 慎一朗氏
たかぎ・しんいちろう

金沢の「日本料理 銭屋」の2代目主人。「ミシュランガイド北陸2021特別版」で二つ星と、環境配慮を評価する「グリーンスター」を獲得。

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