魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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食育専門家・浜田峰子の魚で元気な未来!

2017年12月1日
Column #009

大切なこと伝える
魚偏の漢字

お寿司(すし)屋さんでは、魚偏の漢字がたくさん書かれた湯飲みを見かけます。魚偏の漢字は一文字に魚の旬や昔の食習慣、受け継がれてきた食文化などの情報が詰め込まれていて、その意味や成り立ちを知れば知るほどよくできていることに感心します。私が教えている学校の授業でも生徒たちに、魚偏の漢字を、その意味や背景とともによく紹介しています。

「魚」という漢字は、上から魚の頭、うろこ、尾びれを表した象形文字です。その魚偏に春夏秋冬と書くと、それぞれの季節に旬を迎える魚を表す漢字になります。「鰆(サワラ)」は、関西で春を告げる魚といわれており、俳句で春の季語にもなっています。「●(ワカシ=魚へんに夏)」は、出世魚である「鰤(ブリ)」の幼魚のことで、3~5月に産卵されて夏を迎える頃に15センチ前後に成長し、よく獲(と)れます。「鰍(カジカ)」は秋に旬を迎え、そのおいしさは、箸が進んで鍋底をつついて壊してしまうほどで、「鍋こわし」の異名を持っています。「鮗(コノシロ)」は、漁は秋なのですが、昔から保存食として酢漬けにして冬に食べられてきました。江戸前寿司で人気のネタの小肌はこのコノシロです。

魚偏の漢字からは、今のような加工技術や保存方法もなかった頃に、いかに季節の美味(おい)しい海の幸を楽しみにしていたかがよく伝わってきます。

魚が獲れる時期の気象条件がよく分かる漢字も多くあります。「鱩(ハタハタ)」は、東北の日本海で雷の鳴る11月頃によく獲れるので、別名カミナリウオとも呼ばれています。「鱈(タラ)」は初雪が降った後に獲れ、身が雪のように白いことを表しています。天候が悪い日は海も荒れます。そのような中でも果敢に船を出して漁をしてきた漁業者の方に感謝して美味しく食べようという大切なことを伝える漢字です。

カタカナで表記されることも多い魚ですが、魚偏の漢字に込められた、たくさんの情報を知ると、魚の大切さを知り、心から「いただきます」と手を合わせたくなります。ぜひ皆さんも魚偏の漢字に注目してみてください。

 

浜田 峰子
はまだ・みねこ

食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。

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