魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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食育専門家・浜田峰子の魚で元気な未来!

2018年7月20日
Column #017

「鮎」は豊かな自然の恵み

日本の夏を代表する川魚といえば鮎(あゆ)です。豊かな自然に恵まれた日本では、古くから初夏の恵みである鮎を味わってきました。その独特の香りから「香魚」とも呼ばれています。

鮎は「一年魚」といわれる魚で、卵から孵化(ふか)して1年でその生涯を終えます。10月ごろに産卵し、その稚魚は川を下り海へ出て、幼魚期は河口で育ち、翌年の春に成魚になると再び川に戻り上流へ上ります。稚魚のうちは昆虫類などを餌にしますが、成魚は川石についた珪藻(けいそう)を食べるようになり、これが鮎の独特の香りを生み出すといわれています。

胡瓜(きゅうり)や西瓜(すいか)のような青っぽくみずみずしい香りと評されます。香りは藻の成分によって左右されるため、それぞれの地方の育つ川の環境によって香りも違ってきます。

小さい鮎や産卵期の鮎を守り、資源を保護するために、鮎には漁業調整規則で採捕禁止期間が定められています。6月の鮎釣り漁解禁の日を迎えると、大勢の愛好家が各地の川に繰り出します。最も一般的な漁法が「友釣り」で、縄張りに入ってきた相手を追い払うという鮎の闘争本能を利用し、釣り針を仕掛けた、生きたおとりの鮎を誘導し、追い払いにきた鮎を針に引っ掛けて釣り上げます。愛好家の間ではこうした習性から「喧嘩(けんか)魚」とも呼ばれています。

珪藻を食べる前の水中昆虫などを餌とする時期の鮎を狙って釣るのが、虫に似せた疑似餌の毛針を使った漁法です。毛針は行商人の手によって生活用品や薬などの物資と一緒に全国津々浦々へと広がり、特に鮎がたくさん獲(と)れた地方で改良や工夫が重ねられてきました。今も兵庫県の播州毛針、高知県の土佐毛針、そして北陸の加賀毛針や越中毛針などが有名で、伝統の技が受け継がれ地元の手工業となっています。

大雨で土砂や流木などが押し寄せると新鮮な水が供給されず、川の魚は酸欠になり、餌となる川石の珪藻も育たず死んでしまい、地域の漁業や産業に大きく影響を及ぼします。緑豊かな山と美しい川があってこその夏の風物詩です。大切にいただきましょう。

鮎釣りの解禁日には待ちに待った愛好家が川に繰り出す

浜田 峰子
はまだ・みねこ

食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。

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