夏休みの思い出といえば、お祭り。お気に入りの浴衣を着て、屋台の熱気にわくわくしながら、甘いお菓子を頬張り、金魚すくいを楽しむ人も多いのではないでしょうか。水の中をひらひらと泳ぐきれいな金魚を、円形の枠に和紙を貼ったポイですくって小さな椀(わん)に集めます。和紙は水につけるとふやけてすぐに破れてしまうため、タイミングをはかったり、知恵を絞ったりと、家族で楽しめるイベントですね。
金魚の養殖が盛んな奈良県大和郡山市では、毎年8月に「全国金魚すくい選手権大会」が開催されています。大人から子供まで楽しめて、上位入賞者ともなると、1つのポイであっという間に何十匹とすくうので、会場も大盛り上がりなのだそうです。
日本人になじみ深い金魚の養殖は、河川・池・沼など淡水における内水面漁業の中でも、淡水魚および淡水生物の養殖を行う内水面養殖業に分類されており、日本各地に漁業協同組合があります。その歴史は古く江戸時代に遡(さかのぼ)ります。冷房のなかった時代、ガラス鉢の中を泳ぐ金魚を見て涼をとったのだそうで、金魚は夏の季語にもなっています。
私も小さいころ、運よくすくった金魚を持ち帰り、その日から飼育担当になって図書館で飼育法を調べ、水を替えたり酸素ポンプを取り入れたりしながら世話をし、数年間長生きさせたことがあります。ところが、中には世話をしきれずに近所の公園の池などに勝手に放流してしまう人も少なくなく、問題になっています。
池の水を全部抜いてみるというテレビ番組で、外来種の生物やおそらく縁日で売られていたと思われる金魚やカメが、在来種よりもはるかに多く繁殖しているのが放映されていて驚きました。全国の池や沼では、こうした魚などが繁殖し、今や絶滅が危惧される日本メダカなどを食べてしまい、生態系への被害が発生しています。
金魚は目にも美しい魚です。小さな命を毎日世話することは、子供にとっても、命あるものを大切にし自分の役割をきちんと果たすよい機会になります。ぜひ金魚を楽しみ、愛(め)で、責任をもって飼育しましょう。
夏の風物詩ともいえる金魚すくい
食育専門家。「美味しく楽しく 笑顔は食卓から」をコンセプトに、食の専門知識を生かし水産庁の各種委員や調理師専門学校講師を務めるほか、本の執筆やTVコメンテーターとして各メディアで活動。食育セミナーや食を通じた地域活性化にも精力的に取り組んでいる。著書に「浜田峰子のらくらく料理塾」など。