ネンブツダイを釣り上げた男の子(三重県尾鷲市)
魚離れが進んでいる。平成18年に、1人当たりの年間摂取量で肉類が魚介類を初めて逆転し、その差は広がり続けている。ただ、年齢層によってその差は異なる。50代以上は依然、魚介類の方が多いが、年齢が下がるにつれて肉類を多く食べる傾向にある。親の影響を受ける子供たちの魚食離れは顕著だ。
しかし、子供が魚嫌いとは限らない。魚嫌いの一番の理由は「骨がある」。だから、骨がない寿司は大好きだ。魚の好き嫌いを聞いても、約半分の子供は「好き」と答える。「普通」も4割あるので、「嫌い」は1割ぐらい。
魚に触れる自然体験活動の機会も減っている。海や川で、魚や貝を捕った経験がほとんどない子供が10年の20%から17年には39%に倍増した。子供が海や魚と触れる機会が減ったことも、魚離れにつながっているのではないか。そんな機会を少しでも増やしたいと、パパ仲間たちと企画し、8月26日に三重県尾鷲市で、東京から親子で参加する「釣った&買った魚でお昼ご飯づくり父子料理教室」を開催した。
参加した親子は、早朝6時に港の堤防に移動。手作りの竹竿(たけざお)で、昼飯の魚を求めてサビキ釣りを楽しんだ。晴れ渡るすがすがしい朝に海面に糸を垂らす。釣れる子、釣れない子。場所を変え、情報を仕入れ、子供なりに考える。釣れて喜ぶ子もいれば、愚痴る子も。
そんな中、10歳の女の子の竿が急にしなった。なんと、その日一番の大物、25cmのサバを釣り上げたのだ。女の子は一躍ヒロインに。昼食になりそうな釣果はサバ1匹とネンブツダイ34匹だった。
料理教室では、ひじきの炊き込みごはん、ワカメサラダ、あらのみそ汁、ブリの刺し身を作った。釣った魚は竜田揚げに。
仕入れていただいた6kgのブリ2本は、地元婦人会の協力で見事に3枚おろしに。その様子を子供たちがかぶりついて見ている。腹、背それぞれの柵を切り出して調理台に配る。熱心に包丁を引いて刺し身にする子供たち。自分で作った料理の味は格別。みんな残さず完食した。
子供と一緒に海で捕れたものを一緒に食べるという経験ができる時期はそう長くはない。思い出の海を今のうちに作っておこう。
パパ料理研究家。昭和45年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。