買い物客でにぎわう築地場外市場(6日、東京都中央区)
今月6日、83年の歴史に幕を下ろした築地市場。世界最大級の魚市場で約480種類もの水産物を取り扱っていた。
築地には、日本中から旬の魚が集まる。そして、街のスーパーや魚屋に並ぶ。飲食店ではおススメの一品としてメニューに魚の名前が書き加えられる。
料理の撮影の仕事で、一番難しいのが魚料理の調達だ。魚の仕入れは自然に左右される。魚屋で店頭に並ぶ魚を見てから、レシピを変えることもある。
でも視点を変えると、それが本来の食の売り場なのだ。冷凍技術や物流網が進化し、漁師を含め関係者の努力により、いつでも、どこでも、新鮮な魚が手に入る環境にはなっているが、そればかり求めてもいけない。いま手に入るもので、いかに日々の食卓を切り盛りしていくかを楽しむことが、海に囲まれた日本の食卓のあるべき姿なんだと、魚のプロから教わった。
毎日の楽しみは魚売り場めぐり。そこは、今日買うつもりではなかった魚たちに出会える場。お手頃価格のブリかまが売っていればオーブンでかま焼きにしようと考え、カツオの柵が並んでいたら生姜(しょうが)も買って帰ろうと売り場を移動する。出回り始めたワカサギを見たら、今日は天ぷらとメニューを変更する。
焼くだけ、切るだけで食べられる魚は、実は手間がかからない料理。季節を感じその時期にしか食べられない食材との出会いは、きっと食卓の会話も増やしてくれることだろう。
パパ料理研究家。昭和45年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。