わが家のお花見弁当
「この木の下でお花見弁当を食べよう」。13年前、次女が生まれるタイミングで今の地に引っ越したとき、自宅から歩ける場所の川沿いに桜並木を見つけて決めた。
翌年、長女は3歳、次女は1歳となり、さっそく、家族でお花見を計画した。家族のためのパパ料理を始めて一番作りたかったのが、みんなで食べる弁当だった。お花見弁当に、運動会弁当。家族一緒に景色を見ながら食べるおにぎりは、きっとおいしいだろう。
おにぎりの具は定番がいい。梅干し、サケ、おかか、焼きたらこ。具がないおにぎりもおススメ。家族に人気なのが、塩ごま油おにぎりだ。手に、ごま油と塩をつけてごはんを3回ぐらいぎゅっと軽く握ってノリを巻いて出来上がり。お弁当は、彩りが大切。卵焼きの黄色、青菜のおひたしの緑、ミニトマトの赤、竜田揚げの茶色と並べば、見た目も栄養バランスもばっちりだ。
毎年同じ時期に同じ場所に、同じお花見弁当を作って通った。姉妹の成長が満開の桜とともに写真に残る。しかし、平成23年の春で止まった。長女が小学2年生になる前に難病にかかり闘病生活を送ることになったのだ。病気の進行は速く翌年1月に8歳で天国に旅立った。塩ごま油おにぎりが大好きな娘だった。
毎年、桜は満開に咲き誇る。けれど、家族写真の中に長女はいない。写っていなくても、家族の心のなかにはずっと生きている。わが家は、どんな時でも、食卓に長女の分のごはんも並べる。今年も家族4人分のおにぎりを握ってお花見に行って、家族みんなで笑顔の写真を撮ろう。
パパ料理研究家。昭和45年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。