母から送られてきた酒粕で作って「粕汁」
寒い今の時期、旬を迎える食材がある。「酒粕(さけかす)」だ。日本酒が作られる12~3月の間に酒粕も市場に出回る。
父が京都で酒販の仕事をしていた関係で、冬になると伏見の酒蔵でできた板状の酒粕が段ボールに入ったまま自宅に届いた。重くてひんやりとしていた。
この酒粕を使って母が毎年、粕汁を作ってくれた。鮭(さけ)、竹輪、こんにゃく、大根、ニンジンが入っていた。たっぷり酒粕が入った粕汁はドロっとしている。食べ応え抜群で、食べると体がポカポカする。鮭もうれしかった。
粕汁のお椀(わん)に、ご飯を入れて一緒に食べるのが好きだった。酒粕もご飯も、どちらも米からできたもの。相性がとってもいい。味が染み込んだ大根をかみしめて食べた。
パパ料理を始めたころ、母から京都の酒粕が送られてきたので、おふくろの味を再現しようと試みたが、作り方が分からない。何の具が入っていたかは覚えているが、どうやって味つけしていたのだろう。
鮭は生のままか、焼いて入れるのか。酒粕は塩味がないので味つけは何がいいか。母に聞きながら、焼いた鮭をほぐして入れ、味は薄口しょうゆとみそで整えた。作ってみてわかったが、酒粕は出汁(だし)で溶いてレンジで加熱するなどしないとなかなか溶けない。
今年も京都の母から酒粕が送られてきた。さっそく鍋いっぱいの粕汁を作る。味の好みが似るのか、次女がお替りしている。母から受け継いだ味は、オヤジの味となって世代を超えて受け継がれていきそうだ。
パパ料理研究家。昭和45年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。