肉厚で新鮮なホヤの刺し身
海のパイナップルといわれるホヤ。食べたことがある人はどれぐらいいるだろうか。生ホヤの旬は5月から8月。まさに今だ。食べる機会がなく、実はこの夏初めて食べた。宮城県気仙沼市、いわゆる三陸産の刺し身用の冷凍ホヤを解凍し、いろんな調理方法で食べた。刺し身で食べた感想は、甘く、苦く、塩辛く、なんとも複雑。初めて体験する味だった。人は初めての味覚に戸惑う。好きかもしれないし、苦手かもしれない。
大葉を巻いて天ぷらにして食べた。これも初めての食感。少し慣れてきた。ホヤをしめじと一緒に炒めてしょうゆバターソテーにした。食べやすい。どれもお酒に合う。
なかなか味のクセが強いホヤ。翌日はシンプルに、ポン酢をつけて刺し身で食べる。するとクセは強いが、どんな味なのかが分かっているぶん、楽しめた。おいしい。あきらかに昨日よりも。かみしめる。塩味がきて、甘みも感じ、あとから苦味がやってくる。このクセのある味がたまらない。ホヤの味にはまった人が、夏になると食べたくなるのがよく分かる。決して他の食べ物では味わえないうま味なのだ。
ホヤの殻の見た目もクセがすごい。だから、最初、食べるのに抵抗があるのも分かる。1度食べて、苦手に感じることもあるだろう。けれど、ホヤは、クセのある味を分かったうえで、2度、3度食べるものなのでは。海の恵みたっぷりの海産物の味は複雑だ。ホヤに限らず、2度、3度食べることで、本当のおいしさに気づくこともある。この夏に、まずホヤを試しに食べてみては。
パパ料理研究家。昭和45年生まれ、京都府出身。立命館大卒。平成21年、ビストロパパ代表。26年、日本パパ料理協会設立、会長飯士就任。28年、農林水産省食育推進会議専門委員。SAKANA&JAPAN PROJECT(推進協議会・産経新聞社など)の一環で、父親を魚食推進の担い手に任命する「パパさかな大使」の代表を務める。