魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2021年11月26日
Column #060

タイのフルコースが誰でも簡単に!オンライン料理教室で伝授動画配信中

「ウエカツ流おうちでプライドフィッシュ料理教室~ONLINE~」の様子

言うまでもない。令和2年の春、新型コロナウイルスという半生物が全世界に吹き荒れ、感染致死の恐怖とともに、暮らしと経済を、そして私たちの根幹たる食のかたちを揺るがした。このウイルスを封じ込めるための政策によって人間の活動は激しく制約され、ことに飲食業は大変な停滞を見せたわけだが、その影響は、むろんサカナ業界にも大きな影を落としている。

魚の値段は半値以下、獲(と)るだけ赤字であれば出漁停止。その渦中にあって活況を見せたのは、市中のスーパーであった。在宅要請に応じても人は食わねばならぬ。普段は居酒屋で一杯のオトーサン、コンパに熱心な学生サンなどが自宅で食うを余儀なくされ、ネットで調べて料理を始めることとなり、特に飛躍的に伸びたのは、衰退部門とされてきた鮮魚部であった。

魚を丸ごと買う非日常性、自分で学びながらさばく面白さ、出来が悪かろうが家族や友人と囲む魚料理の旨(うま)さ。この喜びの再発見は、利便性に流されてきた日本人がどこかに置き忘れてきた本能的文化を呼び覚ましたのではないか。

振り返りわが日常は、全国各地の技術指導や料理講習などはずいぶん止まってしまったが、活路もあった。ちょうどコロナが始まった頃、どこからともなく旧友が現れ、あっという間に台所に5台のカメラとモニターが据(す)えられた。東京工業大学の木倉宏成研究室の頭脳と技術がオンライン料理教室のシステムをわが家につくり上げてしまった。

教室に行かずとも自宅でやれる安心感。同じ目線でポイントは拡大もできてわかりやすく、録画すれば復習もできる。コロナの功罪の功は、実地にこそ意義ありとしてきた魚料理講習の狭さを逆に大きく広げてくれたのだった。日本へ、そして世界へ。サカナの道を電波に乗せてお届けできる時代となったのは、コロナのせめてもの救いであった。

上田勝彦さんが講師を務めた「おうちでプライドフィッシュ料理教室~ONLINE~」が11月13日に開かれ、約20組が参加した。全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)が11月1日~30日まで開催している全国各地の漁師自慢の魚料理をお取り寄せして食べ比べることができる「第2回おうちでFish-1グランプリ~ONLINE~」の一環として実施したもの。

全国の漁協や漁連が季節ごとに選定している漁師自慢の魚介である「プライドフィッシュ」の中から三重県漁業協同組合連合会の「伊勢まだい」を食材に選び、1尾1.5キロのマダイ2尾を参加者に事前に送付。

ウエカツさんが、誰でも簡単にさばける「大名おろし」や臭みが残らない下処理方法を伝授。2種類のお刺し身のほか、焼き物、煮物、汁物、混ぜ寿司を参加者と一緒に調理し、タイのフルコースを完成させた。

料理教室の模様は、YouTubeチャンネル「ウエカツ流サカナ道一直線」で配信している。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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