魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2021年12月24日
Column #061

至福の味わい!京丹後の極上サワラ 刺身・炙り・酢締めの豪華3種盛りで

上から刺し身、炙り、酢締めの極上サワラの3種盛り

京都の丹後半島から極上のサワラが届いた

どうも冷えると思ったら寒波到来。ここ数年おとなしくしていた冬将軍が、どうやら今年は目覚めたようだ。海は急速に冷え、素直なサカナたちは餌を荒食い、みるみるうちに肥え太り、「季節というもんはキッチリ来なあきまへんな」と、関西弁が浮かんだある日。京都は丹後半島の舟屋で知られる伊根町からわが家にサワラがやってきた。

4キロほどの青年なれど、小顔で太く、身に硬すぎない張りがある。一昼夜旅してきても緑がかった背の文様は、一目見て、その魚が船上でどのような扱いを受けてきたかを物語る。サワラは身がやわらかい。忙しいからと船上で暴れさせたり、放り投げたりしてはダメ。速やかに締めて血抜きして、冷やしすぎないように冷やす。それでこその、この色なのだ。送り主は京丹後で定置網漁を営む新井崎水産。魚の扱いに厳しい大西幸子さんの声が今日も洋上に響き、若者たちを叱咤(しった)する。そこには魚と人への愛がある。天から授かったこの2つの宝を生かさずにはおかない迫力の母ちゃんはおっかなくて優しい。

旨(うま)さは色に出(い)でにけり。包丁を入れると、〝肉が刃をつかむ〟。見て旨いものは、切って旨い。そして食っても旨いのだ。切るときに感じるこの予感から、既に魚の味わいは始まっている。そうして生まれたいくつかの料理は、これまで抱いていたサワラのイメージを突き抜ける迫力であった。ちょっと書いてみようか。腹側の刺し身、背側の炙り、銀皮つき酢締めの3種。湯煮の和洋中、すき身の団子すまし椀(わん)、角切りの幽庵焼き、サワラめし、そしてサワラのすすぎ鍋。

口に入れて嚙(か)み進めば、有無を言わさず口中にサワラの味と香りが充満し、陶然となる頃には喉の奥に消えてゆく。夢中で食べているうちに、気づけば心はサワラに包まれている。食ってるつもりがすっかり食われている。胸の高まりを超えて神妙かつ暖かな気持ちに満たされる至福はどうだ。これが伊根の京サワラでござる。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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