魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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ウエカツ流サカナ道一直線

2024年9月20日
Column #093

南の島の愛しき小魚グルクン 海が変われど沖縄の県魚は変わらず

沖縄県の県魚、グルクン

その国の象徴たる生き物が指定されているのをご存じであろうか。たとえば日本の樹木は桜で、魚はなんとニシキゴイとのこと。都道府県にもある。してグルクンとは、沖縄の“県魚”なのであります。この響きは沖縄旅行した人なら、とりあえず丸揚げの姿で知っている島の呼び名であって、本名はタカサゴという。

しかし、実は現地ではグルクン、ウクーグルクン、カブクヮーグルクン、ヒラーグルクン-と主に4種類に区別されている伝統的真実を、ご当地のウチナーンチュでさえ知る人は少ないのである。タカサゴ、クマササハナムロ、ニセタカサゴ、ササムロがその正体だ。いずれも沖のサンゴの隙間に群れる30センチに満たない小魚で、「アギヤー」という古来の追い込み網漁によって、潜った海人(ウミンチュ)が大きな網に追い込み大量に獲れる。

そうして沖縄の食卓には、まずは唐揚げ、そして鮮度が良ければ刺し身が並ぶ。海に囲まれた南の島の身近な日常に息づく愛すべき魚。水揚げを手伝いに行くと、バケツ一杯すぐにもらえた思い出の魚。そのグルクンがいま激減している。一つは、追い込み網漁自体が後継者不足であること。もう一つは、水温の上昇によってサンゴが弱り、そこに暮らす魚たちが減っていることに起因する。これが始まったのは何十年も前のことだ。つまり。いま全国で騒いでいる海の危機は、既に南から忍び寄っていたのである。

少なくなったとて、愛着は変わらず、東南アジアから冷凍も輸入されているが、やはり地のグルクンが断然うまい。骨が多いという人がいるが、そうではなく、硬いのであって身離れの良い味わい深い白身魚だ。高温多湿の沖縄では、干物ではなく、2度揚げしてから砕き、それをみそ汁に入れたりご飯に混ぜたりもした。僕は鮮度の良いものを「塩グルクン」にしておき、焼いたりうしお汁や酢締めにしては、はるかなる沖縄に思いをはせ、島の神に海の復活を祈るのである。

上田 勝彦氏
うえだ・かつひこ

ウエカツ水産代表。昭和39年生まれ、島根県出雲市出身。長崎大水産学部卒。大学を休学して漁師に。平成3年、水産庁入庁。27年に退職。「魚の伝道師」として料理とトークを通じて魚食の復興に取り組む。

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