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和食伝導 金沢から世界へ 髙木慎一朗

2020年2月28日
Column #005

伝統料理にもイノベーションを

飛び石をイメージしたseccaのお皿は借景の窓などと調和し、十月亭の空間を演出する(提供写真)

1年で最も寒い2月には、二十四節気における「立春」があります。春を迎えるにあたり料理人として毎年思うことがあります。伝統的な日本料理の素晴らしさを海外にも広めたいという思い、そして和食文化に新しさを加え、今どきの言葉で申し上げるなら「イノベーション」をいかに起こしていくかという課題です。

私は月の半分は海外に出張して、和食文化の素晴らしさを料理によって伝える「出仕事(でしごと)」に努めています。出仕事の行き先は世界各国におよび、ニューヨーク、ロンドン、パリなどの都市に赴き、料理を披露しています。

私自身もその経験からさまざまな刺激を受け、新しいことに取り組んできました。その一つが金沢ひがし茶屋街にオープンした「十月亭(じゅうがつや)」です。日本料理の技法をベースに伝統と革新が融合する場で、その味を都内でも召し上がって頂けるように、お弁当を開発しています。

大きなブリの切り身が特徴的な「ぶりが大きい海鮮玉手箱」と、和食にオリーブオイルをかけて召し上がっていただく「オリーブ滴る 鶏づくし膳」は十月亭の考えを端的に表した商品です。

また、金沢発の「食」のベンチャー企業、「OPENSAUCE(オープンソース)」の創業にも参画しイノベーションの具現化を目指しています。同社は音楽の楽譜に相当する「レシピ・料理技法」を一人一人の料理人の中で眠らせておくことは食文化にとって損失であると考え、IT技術を駆使し、それらを一定のフォーマット(形式)に記録・保存。後世においても高いレベルで、再現できる環境を整えることを目指しています。

このように「伝統と革新」の融合に取り組むなかで、食文化を支える前提である「持続可能性(サステナビリティー)」の重要性を実感し、このテーマにも挑んでいます。

髙木 慎一朗氏
たかぎ・しんいちろう

昭和45年開業の「日本料理 銭屋」の2代目主人。京都吉兆で修業の後、家業を継ぎ、平成28年に「ミシュランガイド富山・石川(金沢)2016特別版」で2つ星を獲得。29年に農林水産省の「日本食普及の親善大使」に任命された。

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