魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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和食伝導 金沢から世界へ 髙木慎一朗

2020年10月9日
Column #013

海外でも注目日本の秋の味覚「松茸」

松茸は日本の秋の味覚の代表だ

心地よい秋風を感じるこの頃、毎朝出かけている近江町市場(金沢市)に並ぶ食材も猛暑の夏とはガラリと様変わりしました。9月から始まった底引き網漁で水揚げされた甘エビやハタハタなどが氷の上に並び、仲買人たちとの会話にあがる魚の名前もサンマやアンコウなど、いつのまにか秋らしくなりました。

日本料理人にとって、秋の食材といえばやはり松茸(まつたけ)が真っ先に浮かんでくるのではないでしょうか。世界中の料理の中でも、日本料理は季節感を盛り込むといわれています。いまだに人工的に栽培できない松茸は、その存在だけで私たちに時季を感じさせてくれます。また、万葉集にもその香りを歌った一首があるほど、はるか昔から日本人に秋を待ち遠しく感じさせてきました。

主を務める「日本料理 銭屋」では主に奥能登の珠洲(すず)から届く松茸を使いますが、入荷状況次第では他の地域で採れたものを使うことも多々あります。近江町市場に並ぶ松茸の産地も日本だけではなく、カナダや中国、ブータン、韓国など国際色豊かです。近年は温度管理されて輸入されるので品質もとても良くなり、その上、国産と比較して安価で、市場に出回る量も大変増えています。

日本では秋の食材の代表である松茸も日本に輸出している諸外国では、これまではそれほど珍重されていなかったようです。今は外貨を稼ぐ重要な輸出品として大切にされている一方で、中国や韓国などでは現地料理の食材として使われ始めています。その理由はもしかしたら、秋の日本料理になくてはならない食材であると聞きつけた外国の料理人たちが、松茸に注目したのかもしれません。また、彼らのお客さまが日本に来て、松茸を食べて、そのおいしさを体験し、自国に戻って料理人たちに松茸を料理するようお願いしたのかもしれません。こうした流れも、日本料理が世界に伝播(でんぱ)、伝承されている証左といえるのではないでしょうか。

髙木 慎一朗氏
たかぎ・しんいちろう

昭和45年開業の「日本料理 銭屋」の2代目主人。京都吉兆で修業の後、家業を継ぎ、平成28年に「ミシュランガイド富山・石川(金沢)2016特別版」で2つ星を獲得。29年に農林水産省の「日本食普及の親善大使」に任命された。

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