魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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和食伝導 金沢から世界へ 髙木慎一朗

2020年12月4日
Column #015

寒ブリとご飯、抜群の相性

水揚げされた寒ブリ

この時期は仕入れのためにしばしば早朝の漁港に出向きます。目的はなんといっても寒ブリです。誰もが思い浮かべる金沢の冬の食材といえばカニとブリ。ですから、銭屋で使うブリはやはり自分の眼で選びたいのです。私は競りに参加することができないので、仲買業者を通して仕入れていますが、長年付き合いのある仲買人は銭屋好みのブリをよく理解してくれているので、どんな時も最高の素材を手配してくれます。

港に水揚げされたばかりのたくさんのブリがまだその輝きを失わないまま並ぶさまはまさに絶景です。出世魚としても有名なブリですが、成魚になるまでの名前は地方によって異なり、その数は全国で100近いともいわれています。石川県内でも、金沢市内と奥能登ではその呼び名が異なったりしているので、その地方ごとにいろいろな呼称があることは容易に想像できます。昔からブリが日本中で身近な存在であったことの証左ともいえます。

ブリの大トロの部分を少し厚めに切り出し、たっぷりの大根おろしと山葵(わさび)を和えて召し上がっていただくスタイルは、先代の頃からの銭屋名物です。幼い頃から、冬のわが家の食卓にはしばしば銭屋で余ったブリの刺し身がありました。たっぷりの大根おろし、山葵、醤油(しょうゆ)と和えていただくブリの刺し身は、炊きたての白いご飯との相性も抜群です。塩焼きもおいしいのですが、麹(こうじ)をたくさん使って仕込んだ特製の味噌(みそ)に漬けたものをこんがり焼いてご飯を食べるともう止まりません。昭和40年代後半から、お得意さまへのご挨拶の品として作られた「ぶりの味噌漬け」は、今でも全国にお届けできる銭屋の冬のベストセラーです。

私は常々、和食は「だしとごはん(米)」が基本だと話しています。もしかしたら、ブリとご飯の相性が私をそんな考えに導いてくれたのかもしれません。

髙木 慎一朗氏
たかぎ・しんいちろう

金沢の「日本料理 銭屋」の2代目主人。「ミシュランガイド富山・石川(金沢)2016特別版」で2つ星を獲得。

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