魚の国 宝の国 SAKANA & JAPAN PROJECT

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2020年11月27日
#005

釣りデビューは西伊豆で!初心者が楽しめるプランを充実釣った魚の買い取りも醍醐味

初心者・子供・女性も歓迎!手軽で楽しい船釣りを

丁寧なレクチャーでお子さんも安心

初心者ばかりでも、この大漁!

緊張の計測タイム。気分はまるで漁師さん

魚払いで買い物が楽しめる

静岡県西伊豆町が、「釣り」を起点とした観光客の誘致に力を入れている。今年9月に観光客が釣った魚を同町が運営する産地直売所「はんばた市場」で、地元で使える電子地域通貨で買い取る「ツッテ西伊豆」をスタート。11月には、観光客向けの企画の充実を図るため、釣具販売大手のイシグロ(同県浜松市)からガイドを招き、モニターツアーや釣り船との意見交換会を行った。こうした企画を主導するのは、西伊豆町まちづくり課の松浦城太郎さん。釣り人はもちろん、初心者や子供、女性など、誰もが気軽に釣りと観光を楽しめる地域を目指しているという。

“プロ”の釣りガイドが改善点をアドバイス

11月1日に実施されたモニターツアーには、西伊豆町の姉妹町である山梨県市川三郷町から12人の町民が招かれた。9月にスタートした「ツッテ西伊豆」を体験してもらうのが目的で、今回はイシグロで釣りイベントを多数主催する村上友規さんがガイドとして同行した。西伊豆町では以前から、観光客に向けて釣り具のレンタルとレクチャーがセットになった船釣り体験プラン「ファミリーフィッシング」などの企画を実施してきた。今回、様々な地域で釣り初心者をガイドしてきた村上さんを招いたのは、体験プランの改善点を探るのが目的だ。

村上さんは、初心者向けという視点でアドバイスする。例えば竿の長さ。西伊豆町では多くの釣り船がレンタル用に長い竿を用意しているが、初心者には短い竿の方が扱いやすいという。また力の弱い女性や子供には、ボタンひとつで糸を巻き上げられる電動リールが安心だ。今回のモニターツアーではイシグロから短い竿と電動リールが貸し出された。

またレクチャーについても、細かい言葉選びが大切だと村上さんは語る。「船長や釣り人と、釣りの知識がない初心者さんとでは、そもそも使う言葉が違います。例えば糸を出すとき、リールに付いている〝クラッチ〟のロックを外すのですが、初心者さんに〝クラッチ〟と言っても通じません。『このボタンを押すと糸が出ます』と言って実践してみせて、やっと伝わります。他にも、魚が泳いでいる層の〝タナ〟や食いついた魚が逃げる〝ばれる〟など、釣り用語をつい使ってしまう船長さんが多いので、そうした表現に気をつけるだけでも、観光客の方がよりチャレンジしやすい環境にできると思います」。

実際にモニターツアーでの村上さんのレクチャーは非常にわかりやすい。専門的な用語を避けて実演を交えつつ、お客さんの理解度を確かめながら進めていく。今回、釣り初心者の子供が何人もいたが、皆すぐに釣り方を理解して、1人で魚を釣り上げていた。また最年少の10歳の女の子が電動リールを使うことで、大人たちと変わらない釣果を上げていた。

この日は2時間半ほど船釣りを楽しみ、全員が真鯛やイサキといった旬の魚を次々に釣り上げた。釣った魚は、買い取ってもらい、はんばた市場で販売できるよう、鮮度を維持するため、船上で血抜きなどの処理が行われた。

釣った魚は電子地域通貨「サンセットコイン」で買い取り

港へ戻ると船長から「乗船証明書」が発行され、釣った魚と共に港からすぐのはんばた市場へ向かった。ツッテ西伊豆の最大のポイントは、この〝買い取り〟体験だ。今回は家族ごとに査定が行われたが、皆、自分たちの魚がいくらになるかはもちろん、他の家族の釣った魚がいくらになるかにも興味津々の様子。特に、1番大きな真鯛を釣り上げた女性の査定は皆が息を飲んで見守り、1匹で3,000円ほどの値が付いた瞬間、歓声が沸き起こった。査定は魚種やサイズ、市場価値などを加味して行われるので、釣ったときには分からない。値付けの緊張感が、ツッテ西伊豆の醍醐味ともいえる。市場にいた観光客も集まってきて、「こんなおもしろい企画があるなら、ぜひ体験してみたい」と興味を示していた。

買い取り代金は、その場で電子地域通貨「サンセットコイン」と交換され、スマートフォンのアプリか専用カードのどちらかにチャージされる。利用できる店舗は、西伊豆町内の飲食店や土産物店、宿泊施設、温泉施設、ガソリンスタンドなど約130カ所。観光客は魚を釣るほどに町で遊べる〝軍資金〟が手に入るのだ。参加者たちは早速、はんばた市場内を物色し、手に入れたばかりのサンセットコインで西伊豆の海・山の幸を購入していた。普段は親にお願いして買ってもらっていた子供達も、今日は自分が釣った魚で手にしたお金で買えるので、欲しいものを堂々と買い物カゴの中に入れていた。

釣り観光の聖地を目指して

参加者は最後に、はんばた市場の隣にある沖あがり食堂で名物「いか様丼」を食べて、帰途へついた。「釣りは初めてだったが、思ったほど大変なことはなく楽しかった」「釣った魚でお土産を買えるのが面白い」と、ツッテ西伊豆の評価は上々。「自分で釣った魚を食べる体験もしたい」という要望も出たが、西伊豆町には釣った魚を料理してくれる飲食店や宿が8店あり、松浦さんは「今度はゆっくりプライベートでお越しいただき、食べるところまで楽しんで欲しい」と笑顔で答えていた。

西伊豆町は、今回のモニターツアーでの知見も活かし、今後も釣りを起点とした魅力的な観光企画を発信していく考えだ。気軽に釣りデビューを果たし、観光やグルメも楽しめる西伊豆をぜひ訪れてみてほしい。

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