ヒラメとアナゴをたっぷりと盛った「常磐もの丼」を披露するあざすコーポレーションの石井勝代表|福島県いわき市の「かに船」
福島県相馬市の相馬原釜地方卸売市場。仲卸の飯塚商店、飯塚哲生代表は水揚げされたヒラメを目利きし金額を書き込んだ札を入れ競り落としていく。この日仕入れたのは最大で7kgの大物ぞろいだ。
「早朝に取った魚が午前中に水揚げされ、すぐに血抜きの処理もしているので鮮度は抜群。身が厚くプリプリと歯応えがあって、甘みが強い」
丸々と太ったアナゴは生きたまま水揚げされる。「豊富で上質な餌のプランクトンを食べているので、脂のうま味が断然違う」と、飯塚さんは胸を張る。
親潮と黒潮がぶつかる福島県沖の海域で取れた魚介類は「常磐もの」と呼ばれ、そのおいしさは高く評価されてきた。しかし、現在の福島の沿岸漁業は、県による放射性物質のモニタリング検査で安全性が確認された魚種について小規模な操業と販売を行う「試験操業」のままだ。出漁は漁法ごとに週1~2日で、昨年の水揚げ量は震災前の14%にとどまっている。
同卸売市場を運営する相馬双葉漁業協同組合では水揚げされたすべての魚種ごとに自主検査も実施し安全性の確保を図っている。
飯塚さんは「本格操業の再開には、一人でも多くの人に常磐もののおいしさを知ってもらい、取引先から引き合いを増やしていくしかない」と訴える。
「ヒラメは自前のかつおだししょうゆに漬けることで、うま味がさらに際立つ。アナゴは脂のうま味を堪能してもらえるよう白焼きにした」
飯塚さんが仕入れたヒラメとアナゴをふんだんに使った「常磐もの丼」を考案したのが、同県いわき市で和食店「かに船」を経営するあざすコーポレーションの石井勝代表だ。
石井さんは、震災直後から全国各地で行われる物産展やイベントを飛び回り、ウニを貝殻に盛って蒸し焼きにしたいわきの郷土料理の「うに貝焼き」など、福島県産の水産物を販売してきた。
「毎年1回、同じ場所に出掛けていって、福島のものを届けることが大事だと思っている。『おいしかった』と言って必ず買いに来てくれたり、通販で買ってくれたりするリピーターが増えてきた」と、手応えを感じている。
日比谷公園での「ジャパン フィッシャーマンズ フェスティバル」では、「常磐もの丼」や「うに貝焼き」「葱(ねぎ)タコ」などを提供する。
「おいしいものを楽しんで味わってもらうという、自分にできることを地道にやるしかない」。石井さんはこう力を込めた。
(2018年11月11日)